交通事故による死亡者が年々減る一方で、家庭内事故死が年々増加しているのをご存じでしょうか?
自宅浴室での死者は、病死扱いを含めると交通事故死の3倍ともいわれ、冬では自宅での循環器疾患起因死が急増します。近年、異常気象で気温の変動が大きくなってきており、冬は寒さで体調を崩しやすく、夏は熱中症のリスクが高まっています。
そういった健康リスクを軽減するための健康投資として検討して頂きたいのが「断熱リフォーム」です。
このコラムでは、健康投資として行う断熱リフォームのメリットについて解説していきます。
健康に配慮したリフォームの進め方
断熱リフォームを施すべき理由は、冬場の寒さや夏場の暑さを軽減し、室内環境を一定に保つことが可能だからです。断熱性能の高い北海道では、心疾患、脳血管疾患、呼吸器疾患の家庭内死亡率が低く、断熱性能の規制が緩い四国・中国地方では死亡率が高い、というデータもあるほどです。(注1)
「家族全員が健康的で、安心して暮らすためのリフォーム」を計画するためにも、断熱性能について検討することが求められます。
(注1)濱田直浩、 羽山広文他「人口動態統計を用いた住宅内の安全性に関する研究その7」2012年日本建築学会学術講演会
健康と快適さを追求する
断熱リフォームは、住環境の「健康」と「快適さ」を大幅に向上させることができます。断熱材の導入や窓の二重ガラス化によって、冬は暖かく、夏は涼しい環境が実現します。これにより、冷暖房の使用を減らして省エネにもつながり、家計にもプラスとなります。
断熱リフォームをすると、防音対策にもなるため、外部の騒音を遮断し、静かでリラックスできる空間を作り出すことも可能です。無意識であっても、音でストレスがある生活と、静かでストレスの軽減された生活では、健康格差が生まれてくることは想像に難くありません。リフォームは「単に部屋が綺麗になる」だけではなく、生活の質を向上させてくれます。
理想の室内温度は18℃以上!断熱リフォームで快適な生活を
適切な室温は、健康を維持するために欠かせない要素ですが、室温を18℃以上に保つことは健康に大きな影響を与えると言われています。冬場や夏場の温度差は、身体に大きな負担をかけ、疾病リスクを高めます。住宅に適切な断熱を施すことで、このリスクを下げることができます。さらに、断熱リフォームは湿度のコントロールにも役立ち、カビや結露の発生を防ぎます。これにより、空気環境が改善され、アレルギーや呼吸器系の問題も軽減されるでしょう。断熱リフォームを通じて、「快適」な住環境を実現し、家全体の価値も向上させることが可能です。
高断熱と高血圧の密接な関係
高断熱の住宅は健康に大きな影響を与えますが、特に「血圧」に対する効果は顕著です。室温が低いと血圧が上昇しやすくなりますが、朝の室温が10℃低いと、高血圧になるリスクは飲酒などよりはるかに大きくなります。しかも、高齢者ほど血圧が大きく上昇してしまうとのことです。高断熱住宅にすることで、血圧変動を抑え、心臓への負担が軽減されることで、心血管系のリスクが低減されます。こういった、目に見えにくい影響の積み重ねで健康で長生きができます。
高断熱住宅で防ぐ「ヒートショック」
ヒートショック現象とは、家の中の温度差で血圧変動が激しくなり、めまい・立ちくらみなどの症状が身体に現れることです。ひどくなると、呼吸困難や嘔吐、意識障害など、心筋梗塞や脳卒中につながる危険な状態になることも。健康な人であれば、血圧変動にある程度耐えられるのですが、体の弱ってきた高齢者は特にヒートショックにかかりやすいといわれています。
高断熱リフォームをすることで、室内の温度差を小さくし、ヒートショックのリスクを軽減でき、四季を通じて「快適」な住環境を実現できます。特に高齢者世帯に高断熱リフォームをお勧めしています。
夏は遮熱・冬は断熱!季節に合わせたリフォームのポイント
夏の暑さを和らげるためには「遮熱」対策も重要です。例えば、屋根や外壁に遮熱塗料を使用したり、サンシェードを設置することで室温を上げない効果が期待できます。一方、冬の寒さ対策には「断熱」です。断熱材を壁や床、天井に適切に配置することで、暖房効率が向上し、エネルギーコストの削減にもつながります。コストパフォーマンスとしては、窓リフォームが効果的です。二重窓や断熱性能の高いサッシを導入することで、季節を問わず快適な室内環境を維持できます。これらのリフォームは、家族の生活の質(QOL)を向上させる重要なポイントとなります。
断熱リフォームは、住宅の快適性を向上させ、健康に良い影響を与えます。ますます激甚化する冬の寒さや夏の暑さから身体を守りましょう。
補助金制度の活用で、より手軽に断熱リフォームを
国や各自治体が提供する補助金制度を活用することで、断熱リフォームの費用負担を軽減できます。詳しくは下記をご確認の上、当社までご相談ください。
最新の断熱材と窓リフォーム
最新の断熱材は、従来の素材よりも高い性能を持ち、エネルギー効率の向上にも寄与します。特に吹付で隙間なく施工できるセルロースファイバーが注目されています。ただし、吹付施工の断熱材は熱損失を最小限に抑えますが、非常に高価です。一方で、ロックウールは安価に導入でき、施工も容易な断熱材として人気があります。断熱材の選定については、予算や施工箇所によって相談となります。
優先的にやるべき断熱強化箇所は、天井と床です。また、どうしても熱が逃げやすい窓の断熱性能を高める二重サッシ(内窓)やペアガラス(トリプルガラス)の導入も効果的です。外部からの冷気や熱気を遮断し、より快適な室内環境を維持できます。
投資回収目線でみる断熱リフォーム
断熱リフォームは価値ある住宅投資ですが、省エネ効果による光熱費削減だけで投資回収を考えるのはやや無理があります。
ただし、健康維持による医療費削減や自分自身が健康的に活動できる期間を伸ばすメリットから考える「健康投資」という考え方で見れば、10年強で投資回収ができると考えられています。
また、2025年以降は断熱等性能等級4(UA値0.87)が新築住宅の適合基準となるため、中古住宅のご売却に有利になるため、QOL向上と資産価値向上の観点からみても、断熱性能を早めに上げておくことは有用であると想定できます。
※伊香賀俊治,江口里佳,村上周三,岩前篤,星旦二ほか: 健康維持がもたらす間接的便益(NEB)を
考慮した住宅断熱の投資評価,日本建築学会環境系論文集,Vol.76,No.666,2011.8